5 解雇に関する事項


[1] 解雇権濫用法理の明記 法第18条の2

最高裁の判決で確立しているものの、これまで労使当事者間に十分に周知されていなかった「解雇権濫用法理」が法律に明記されました。
すなわち、労基法18条の2として、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」との規定が設けられました。

「解雇権濫用法理」とは


 「解雇権濫用法理」とは、昭和50年4月25日の最高裁判決(日本食塩製造事件)において示されたものです。この判決では、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」と判示されています。

[2] 証明書による解雇理由の明示 法第22条2項

解雇をめぐるトラブル防止のため、退職時の証明に加えて、労働者は、解雇の予告をされた日から退職の日までの間においても、解雇の理由についての証明を請求できます。ただし、使用者は、解雇の予告がされた日以後に労働者がその解雇以外の事由によって退職した場合は、この証明書を交付する義務はありません。

[3]「解雇の事由」は就業規則に 法第89条3号

労使当事者間において、どのような場合に解雇になるのかということについて事前に明らかにし、紛争を未然に防止するため、就業規則において「退職に関する事項」欄に、「解雇の事由」を記載する必要があります。

[4] 労働契約の際にも「解雇の事由」を明示 施行規則第5条

労働契約を結ぶ際に、書面によって明示しなければならない労働条件として「退職に関する事項」がありますが、この「退職に関する事項」として「解雇の事由」もまた、同様に書面によって明示しなければなりません。




6 解雇の予告

(法第20条、第21条)
労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。(平均賃金を何日分か支払った場合はその日数分予告期間が短縮されます)

次の場合は解雇予告等が除外されています
1. 日々雇い入れられる者(ただし1ヶ月を超えて引き続き使用されてる場合、解雇予告手続が必要です)
2. 2ヶ月以内の期間を定めて使用される者(ただし契約期間を超えて引き続き使用されてる場合、解雇予告手続が必要です)
3. 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用されている者(ただし契約期間を超えて引き続き使用されてる場合、解雇予告手続が必要です)
4. 試みの試用期間中の者(ただし14日を超えて引き続き使用されてる場合、解雇予告手続が必要です)


認定を受ければ解雇予告等が除外されるケース
天災事変その他やむを得ない理由で事業の継続が不可能となり、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたとき。
労働者の責に帰すべき事由によって解雇するときで、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたとき。
例)横領・傷害・2週間以上の無断欠勤等





7 退職時の証明

(法第22条)
労働者が退職の場合に在職中の契約内容等について証明書の交付を請求したときは、使用者は遅滞なく、これを交付しなければならない制度のことをいいます。
なお、労働者の請求しない事項を記入してはいけないことになっています。




8 金品の返還

(法第23条)

労働者の死亡または退職の場合に、権利者から請求があったときには、7日以内に、賃金の支払いをし、積立金、保証金、貯蓄金その他名称にかかわらず労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。

7日以内の賃金の支払い
所定支払日が到来しなくても、支払う必要があります。(退職金は、退職金制度に基づく支払期日に支払えばよいことになっています。)

7日以内の金品の返還
もともと労働者に所有権がある金銭と物品で、労働関係に関連して使用者が預り、または保管していたものを返す必要があります。

労使間に争いがあるとき
賃金または金品について、その有無、額等に争いがある場合には、異議のない部分についてのみ7日以内に支払い・返還をする必要があります。